水平リサイクルとは?仕組み・メリット・課題を解説

水平リサイクルとは、使用済み製品を原料として再生し、再び同じ種類の製品に利用するリサイクルです。使用済みPETボトルから新しいPETボトルを製造する「ボトルtoボトル」が代表例です。
同じ用途に戻すことで、バージン材の使用量や焼却・最終処分量を抑え、資源の用途や機能を維持しやすくなります。ただし、水平リサイクルであれば必ずCO2排出量やコストを削減できるわけではありません。回収・運搬・再生を含むライフサイクル全体で効果を確認する必要があります。
本記事では、水平リサイクルの仕組み、他のリサイクルとの違い、メリットと課題、国内の事例、企業が取り組む際のポイントを解説します。
本記事について
当サイトでは2022年8月に 「広がる「水平リサイクル」「ボトルtoボトル」とは?」 を公開しました。本記事では、その後の制度やリサイクル技術、国内事例の変化を踏まえ、水平リサイクルの定義、他のリサイクルとの違い、メリットや課題について改めて整理しています。
水平リサイクルとは
水平リサイクルは、使用済み製品を原料として、再び同一種類の製品を製造するリサイクルです。
環境省も「使用済製品を原料として用いて同一種類の製品を製造するリサイクル」と定義し、ガラスびん、アルミ缶、PETボトルなどを例に挙げています。
「バージン材と完全に同じ品質であること」や「同じ価格で取引されること」は、水平リサイクルの定義ではありません。再生材を一部配合した製品でも、回収した材料が同じ種類の製品に戻っていれば、水平リサイクルと呼ばれる場合があります。
一般的な流れは以下のとおりです。
- 使用済み製品を回収する
- 異物や汚れを除去する
- 素材を選別して再生原料に戻す
- 再生原料から同じ種類の製品を製造する
- 使用後に再び回収する
再生方法は素材によって異なります。プラスチックでは洗浄・粉砕・除染・ペレット化、金属では電気炉などでの溶解、ガラスではカレット化などが行われます。
他のリサイクルとの違い
水平リサイクルとマテリアルリサイクルは、分類の基準が異なります。
| 種類 | 分類基準 | 内容 |
|---|---|---|
| 水平リサイクル | 再生後の用途 | 使用済み製品を原料として、同じ種類の製品に戻す方法 |
| カスケードリサイクル | 再生後の用途 | 品質の変化に応じて、別の用途や製品に利用する方法 |
| マテリアルリサイクル | 再生方法 | 廃棄物を処理し、製品の材料として再利用する方法 |
| ケミカルリサイクル | 再生方法 | 廃棄物を化学的に分解し、原料や中間原料に戻す方法 |
例えば、PETボトルから繊維やシートを製造する方法は、マテリアルリサイクルであり、一般的にはカスケードリサイクルに分類されます。
一方、PETボトルのボトルtoボトルには、物理的な処理を行うメカニカルリサイクルと、化学的に分解して再びPET樹脂を製造するケミカルリサイクルがあります。どちらも最終的にPETボトルへ戻るため、水平リサイクルです。
ポイント
水平リサイクルは、マテリアルリサイクルだけに限定されません。「再生後に何へ戻すか」と「どの方法で再生するか」を分けて考えることが重要です。

水平リサイクルが求められる背景
水平リサイクルが注目される背景には、資源価格の変動、原料の輸入依存、廃棄物問題、脱炭素への対応があります。
回収した材料を同じ製品の原料として利用できれば、天然資源や化石由来原料から製造するバージン材への依存を抑えられます。国内で一定量の循環原料を確保することは、調達先の分散や供給の安定化にもつながります。
また、再生材によってバージン材の製造を代替できれば、原料採掘や精製などに伴うCO2排出量を削減できる場合があります。
ただし、リサイクルよりもリデュースやリユースが優先されるのが基本です。製品の長寿命化や再使用を検討したうえで、再使用できないものを適切にリサイクルする必要があります。
水平リサイクルのメリット
水平リサイクルの主なメリットは、資源の用途を維持しながら循環させられる点です。
- バージン材の使用量を抑えられる
- 焼却や最終処分に回る量を減らせる
- 国内で循環原料を確保できる
- 再生材の用途を明確にしやすい
- 回収・再生・製造事業者の連携を強化できる
- CO2排出量を削減できる場合がある
同じ製品に戻す仕組みが確立すると、回収物の利用先が明確になります。再生材を継続的に使用する企業が確保されれば、安定した循環ルートを構築しやすくなります。
一方、再生材が必ずバージン材より安くなるとは限りません。回収・運搬・選別・品質検査などの費用を含めて判断する必要があります。
水平リサイクルの課題とデメリット
水平リサイクルの大きな課題は、同じ製品に戻せる品質の再生材を安定して確保することです。
異物や汚れが品質に影響する
回収物に内容物、異素材、接着剤、ラベルなどが混ざると、再生材の品質や再生工程の歩留まりが低下します。
特にマテリアル・メカニカルリサイクルでは、単一素材で汚れが少ないほど再生しやすくなります。製品を設計する段階から、素材の統一や分解・分別のしやすさを考えることが重要です。
回収・再生コストがかかる
使用済み製品は発生場所が分散しているため、回収量が少ないと運搬コストが高くなります。また、洗浄・選別・除染設備への投資や、再生材の品質検査も必要です。
回収量だけを増やすと異物混入が増える可能性があります。必要な量と品質を同時に管理しなければなりません。
再生材の利用先が必要になる
回収・再生した材料を継続的に使用する企業がなければ、水平リサイクルは成立しません。
バージン材価格が下がると、再生材が割高になり、需要が減る場合もあります。長期契約や共同調達などにより、価格変動に左右されにくい利用先を確保することが重要です。
法制度への対応が必要になる
回収物が廃棄物に該当する場合は、水平リサイクルを目的としていても廃棄物処理法が適用されます。
プラスチック製品にはプラスチック資源循環促進法、容器包装には容器包装リサイクル法、食品用の合成樹脂製容器包装には食品衛生法などが関係します。
企業が独自回収を行う場合は、回収物の区分、収集運搬・処分の許可、委託契約、マニフェストの要否などを事前に確認する必要があります。
水平リサイクルの代表的な事例
PETボトルからPETボトル
ボトルtoボトルは、使用済みPETボトルを原料にして、新しい食品用PETボトルを製造する取り組みです。
国内では、洗浄や除染を行うメカニカルリサイクルと、PETを化学的に分解して再重合するケミカルリサイクルが実用化されています。
紙おむつから紙おむつ
使用済み紙おむつからパルプを分離・再生し、再び紙おむつの原材料として使用する取り組みも商品化されています。
紙おむつ全体をそのまま再生するのではなく、殺菌・洗浄した再生パルプを原材料の一部に使用する方法です。
つめかえパックからつめかえパック
使用済みつめかえパックなどから製造した再生材料を、新しいつめかえパックに使用した事例があります。
複数素材を組み合わせたフィルム容器は再生が難しいため、回収方法、異物除去、再生技術を組み合わせた取り組みが必要です。
刃物から刃物製品の材料
回収した包丁やはさみなどを電気炉で溶解し、ステンレスとして再資源化したうえで、再び刃物製品の材料に使用する取り組みも行われています。
樹脂ハンドル付きの刃物から金属を回収し、同じ製品分野へ戻している点が特徴です。

水平リサイクルを進めるポイント
水平リサイクルを継続するには、回収を始める前に、再生方法と利用先を決めることが重要です。
まず、対象製品の素材構成、汚れやすさ、分解のしやすさを確認します。そのうえで、必要な回収量、品質基準、再生材の利用先、法制度上の手続きを整理します。
実施後は、回収率だけでなく、異物混入率、再生工程の歩留まり、再生材配合率、輸送距離、CO2排出量などを継続的に確認します。再生材比率だけで環境効果を判断せず、ライフサイクル全体で評価することが重要です。
水平リサイクルに関するよくある質問
水平リサイクルとマテリアルリサイクルは同じですか?
同じではありません。水平リサイクルは再生後の用途、マテリアルリサイクルは再生方法を表します。マテリアルリサイクルした材料を同じ製品に戻す場合もあれば、別の製品に利用する場合もあります。
水平リサイクルは何回でも繰り返せますか?
素材や再生方法によって異なります。金属やガラスは比較的繰り返し利用しやすい一方、プラスチックや紙は熱履歴や繊維の劣化などによって品質が低下します。異物除去やバージン材との配合も必要です。
水平リサイクルは必ずCO2削減になりますか?
必ず削減できるわけではありません。回収・運搬・洗浄・再生工程でもCO2が排出されるため、バージン材を使用した場合とライフサイクル全体で比較する必要があります。
事業系廃棄物の資源循環・リサイクルはエコ・ブレインへ
水平リサイクルをはじめとする資源循環を進めるには、廃棄物の種類や素材を確認し、異物混入を抑えながら、再生後の利用先まで見据えた回収ルートを構築する必要があります。
株式会社エコ・ブレインでは、店舗、オフィス、工場などから排出される事業系廃棄物について、廃棄物区分の確認、分別方法の提案、収集運搬業者・処分業者の手配、リサイクルルートの検討、マニフェスト対応などのご相談を受け付けています。
「現在の廃棄方法を見直したい」「リサイクル率を高めたい」「回収した資源を同じ製品に戻せるか確認したい」といった場合もご相談ください。品目、排出量、汚れや異物の状態を確認し、水平リサイクルを含む適切な資源化方法を検討します。
まとめ
水平リサイクルとは、使用済み製品を原料として、再び同じ種類の製品に戻すリサイクルです。
バージン材の使用量や焼却・最終処分量を抑えられる一方、回収品質、再生コスト、利用先の確保、法制度への対応が課題になります。
すべてを水平リサイクルするのではなく、リデュースやリユースを優先し、品質に応じてカスケードリサイクルも組み合わせることが重要です。回収・再生・製造に関わる事業者が連携し、継続できる循環ルートを構築することが成功のポイントです。
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[著者]

経歴:2019年にエコブレインに入社。以降5年間、広報部での経験を活かし、環境保護の重要性を広めるための活動に尽力している。特にデジタルマーケティングとコンテンツ制作に強みを持ち、多くの記事を執筆している。
趣味: 読書、ヨガ、カフェ巡り
特技: クリエイティブライティング、データ分析とマーケティング戦略立案












