除去土壌とは?産業廃棄物との違いと処分、再利用の仕組み

東京電力福島第一原子力発電所の事故後、生活圏の放射線量を下げるため、各地で土壌等の除染が行われました。この除染に伴って発生した土壌が「除去土壌」です。
除去土壌は、一般的な産業廃棄物とは異なる法律と管理基準に基づいて保管・処分されます。そのため、通常の産業廃棄物処理業の許可があれば自由に回収・処分できるものではありません。
産業廃棄物の処理に関わる事業者にとっても、除去土壌、除染廃棄物、建設発生土、汚染土壌の違いを理解し、それぞれを適切に区分することが重要です。
本記事では、除去土壌の定義から保管・埋立処分・復興再生利用の仕組み、産業廃棄物処理事業者が注意したいポイントまで解説します。
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除去土壌とは
放射性物質汚染対処特措法では、除去土壌を、除染特別地域や除染実施区域における「土壌等の除染等の措置」に伴って生じた土壌と定義しています。
具体的には、放射線量を低減するために、住宅の庭、学校、公園、農地、道路などから取り除かれた表土や、側溝などから回収された堆積物のうち、土壌に該当するものです。
東京電力福島第一原子力発電所の事故によって環境中に放出された放射性セシウムは、土壌の表面付近にとどまり、土の粒子や粘土鉱物に吸着しやすい性質があります。そのため、表土のはぎ取りや側溝の堆積物の除去などが、生活圏の放射線量を下げる方法として実施されました。
ただし、放射性物質が含まれている可能性がある土壌のすべてが、法律上の除去土壌になるわけではありません。除染特別地域や除染実施区域ではない場所で、個人が独自に取り除いた土壌などは、原則として特措法上の除去土壌には該当しません。
除去土壌は産業廃棄物ではない
除去土壌は、廃棄物処理法で定められている産業廃棄物20種類の一つではありません。放射性物質汚染対処特措法に基づいて管理される、独立した区分です。
関連する土や廃棄物との一般的な違いは、次のとおりです。
| 区分 | 主な内容 | 主な法的な位置づけ |
|---|---|---|
| 除去土壌 | 特措法に基づく除染等で取り除かれた土壌 | 放射性物質汚染対処特措法 |
| 除染廃棄物 | 除染に伴って発生した草木、落ち葉、枝、可燃物など | 性状や発生状況に応じて特措法等に基づき処理 |
| 建設発生土 | 建設工事で発生した通常の土砂 | 通常は廃棄物処理法上の廃棄物に該当しない |
| 汚染土壌 | 鉛、ヒ素などの特定有害物質により汚染された土壌 | 土壌汚染対策法 |
| 産業廃棄物 | 事業活動に伴って発生する汚泥、廃プラスチック類、がれき類など | 廃棄物処理法 |
除染現場では、土壌だけでなく、落ち葉や枝、草なども同時に回収されます。しかし、これらすべてを「除去土壌」と呼ぶわけではありません。
土壌は除去土壌、草木などは除染廃棄物として区分し、両者をまとめて表す場合には「除去土壌等」という言葉が用いられます。

福島県内と県外で異なる処理の流れ
除去土壌の処理方法を理解するうえで重要なのが、「福島県内で発生したもの」と「福島県外で発生したもの」の区別です。
| 発生場所 | 基本的な処理の流れ |
|---|---|
| 福島県内 | 仮置場等から中間貯蔵施設へ搬入し、復興再生利用または福島県外での最終処分を検討 |
| 福島県外 | 現場や仮置場等で保管し、市町村等による埋立処分または復興再生利用を検討 |
福島県内で発生した除去土壌等は、福島県大熊町と双葉町に整備された中間貯蔵施設へ搬入されています。
一方、福島県外で発生した除去土壌は、中間貯蔵施設には運ばれません。市町村等による処分が行われるまで、発生地域の仮置場や現場保管場所などで管理されます。
「福島県外で発生した除去土壌」と「福島県内で発生した除去土壌等の県外最終処分」は意味が異なるため、混同しないことが重要です。
仮置場と中間貯蔵施設での管理
除去土壌等は、仮置場や現場保管場所において、周辺への飛散・流出や放射線の影響を抑える対策を講じて保管されます。
一般的な地上保管では、除去土壌等をフレキシブルコンテナや大型土のうなどに入れ、遮水シートの上に置きます。さらに上部を防水シートで覆い、雨水の浸入、土壌の流出、粉じんの飛散などを防ぎます。
周囲を汚染されていない土壌等で覆うことにより、放射線を遮へいする対策も行われます。保管中は敷地境界の空間線量率や地下水などを測定し、シートや排水設備の状態を定期的に点検します。
福島県内の除去土壌等を受け入れる中間貯蔵施設では、袋を開封して草木や金属などの異物を取り除き、分別した土壌を土壌貯蔵施設で管理しています。土壌貯蔵施設には遮水工や集排水設備、浸出水処理施設などが設けられ、施設周辺の空間線量率や地下水、処理水などのモニタリングが行われています。
福島県外で発生した除去土壌の埋立処分
2025年3月、福島県外で発生した除去土壌の埋立処分基準が策定され、同年4月1日に施行されました。
主な基準は次のとおりです。
- 除去土壌の飛散・流出を防止する
- 騒音や振動などによる生活環境への影響を防止する
- 埋立場所の周囲に囲いと表示を設ける
- 敷地境界の空間線量率を測定・記録する
- 除去土壌の量、放射能濃度、埋立位置などを記録する
- 埋立作業の終了時に、おおむね30センチメートル以上の土壌等で覆う
- 埋立後も覆土や表示を維持し、定期的にモニタリングする
放射性セシウムは土壌に強く吸着し、通常は水に溶出しにくいため、すべての埋立場所に遮水工や浸出水処理設備が必要となるわけではありません。
放射性セシウムが溶出し、公共用水域や地下水を汚染するおそれがある場合には、遮水工、集排水設備、水処理設備などの追加措置が必要です。
参考:環境省「福島県外において発生した除去土壌の埋立処分に係るガイドライン」

復興再生利用とは
復興再生利用とは、除去土壌を用途に応じて処理し、適切な管理の下で盛土、埋立て、充填などの資材として利用する仕組みです。
自由に販売・流通させる一般的なリサイクルとは異なり、公共事業または実施主体と責任体制が明確で、継続的かつ安定的に行われる事業での利用を前提としています。
復興再生利用を行う場合は、袋の開封、異物除去、水分・粒度の調整などによって再生資材化します。その後、放射能濃度を測定し、基準に適合していることを確認します。
再生資材化した除去土壌の放射性セシウム濃度は、セシウム134とセシウム137の合計で8,000Bq/kg以下と定められています。
この基準は、覆土等がない状態で工事に従事する作業員であっても、追加被ばく線量が年間1mSv以下となるよう設定されたものです。利用後は覆土や被覆を設けることで、周辺住民や施設利用者への影響をさらに低減します。
施工時と維持管理時には空間線量率を測定し、利用場所、利用量、放射能濃度などの記録を保存します。除染実施者、事業実施者、施設管理者の役割分担を明確にすることも必要です。
福島県内の除去土壌等は2045年3月までに県外最終処分
福島県内で発生し、中間貯蔵施設に保管されている除去土壌等について、国は中間貯蔵開始後30年以内、具体的には2045年3月までに福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講じることとされています。
最終処分する量を減らすため、放射能濃度の低い土壌の復興再生利用や、濃度の高い土壌を分離する減容技術の検討が進められています。
ただし、復興再生利用は最終処分の法的な前提条件ではありません。国は、最終処分量を現実的な規模まで低減するための重要な施策として位置づけています。
県外最終処分場については、構造や必要面積、減容方法などの複数の選択肢が示されています。現在は候補地選定の方法や地域とのコミュニケーション、管理終了の考え方などを具体化している段階です。
産業廃棄棄物処理事業者が注意したいポイント
除去土壌は、通常の産業廃棄物と同じ判断で引き受けることはできません。
土壌や土のう袋などの処理相談を受けた場合は、発生場所、発生した作業、保管主体、自治体による除染事業との関係、内容物などを確認する必要があります。
特に、通常の建設発生土や建設汚泥、がれき類と、除去土壌を混同しないことが重要です。保管容器の中に土壌と草木などが混在している場合は、除去土壌と除染廃棄物を分別して判断する必要があります。
また、除去土壌には通常の産業廃棄物管理票、いわゆるマニフェストの仕組みがそのまま適用されるわけではありません。特措法に基づき、由来、量、放射能濃度、運搬先、埋立位置などを記録・管理します。
産業廃棄物処理業の許可だけを根拠に、一般の事業者や個人から除去土壌の処理を受託できるものではありません。除去土壌の可能性がある場合は、自己判断で移動・処分せず、保管を担当する市町村や所管の環境事務所へ確認することが必要です。
土壌・廃棄物の区分でお困りの場合はエコ・ブレインへご相談ください
工事や設備の撤去などで発生する土や泥、がれき、混合物は、発生した工程や性状によって、建設発生土、建設汚泥、がれき類、汚染土壌などに区分されます。
エコ・ブレインでは、廃棄物の発生場所、数量、状態などを確認し、一般的な事業系廃棄物・産業廃棄物の区分や処理方法、委託先の選定についてご案内しています。複数の廃棄物が混在している場合や、必要な許可が分からない場合もご相談ください。
- 土、汚泥、がれき類の区分が分からない
- 建設廃材や残置物をまとめて処分したい
- 複数の素材が混在し、分別方法に困っている
- 処理を委託できる許可業者を探している
- 委託契約やマニフェストの対応を確認したい
ご注意:放射性物質汚染対処特措法上の除去土壌は、通常の産業廃棄物とは異なる制度で管理されます。除去土壌の可能性がある場合は、保管を担当する市町村または所管の環境事務所へご確認ください。
まとめ
除去土壌は、東京電力福島第一原子力発電所事故後の除染等によって生じた土壌であり、一般的な産業廃棄物とは異なる法制度で管理されています。
福島県内で発生した除去土壌等は中間貯蔵施設へ搬入され、復興再生利用や2045年3月までの福島県外最終処分に向けた取組が進められています。一方、福島県外で発生した除去土壌は、地域の市町村等が埋立処分や復興再生利用を進めます。
産業廃棄物処理に関わる事業者には、除去土壌、除染廃棄物、建設発生土、汚染土壌を正しく区分し、通常の産業廃棄物処理とは異なる手続きや管理基準があることを理解した対応が求められます。

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[著者]

経歴:2019年にエコブレインに入社。以降5年間、広報部での経験を活かし、環境保護の重要性を広めるための活動に尽力している。特にデジタルマーケティングとコンテンツ制作に強みを持ち、多くの記事を執筆している。
趣味: 読書、ヨガ、カフェ巡り
特技: クリエイティブライティング、データ分析とマーケティング戦略立案











