ネットゼロとは?カーボンニュートラルとの違い、企業の実現方法

ネットゼロ(Net Zero)とは、人為的に排出される温室効果ガスを可能な限り削減し、削減しきれない残余排出量と、人為的な吸収・除去量を均衡させる状態です。
省エネルギー、再生可能エネルギー、工程転換などで排出そのものを大幅に減らし、最後に残る排出だけを吸収・除去で中和することが基本です。本記事では、関連用語との違い、Scope1・2・3、SBTi、企業の実現方法を解説します。
※本記事は2026年8月31日時点で公表されている情報に基づいています。
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ネットゼロとは
ネットゼロの「ネット」は、「正味」や「差し引き」を意味します。一定の期間と算定範囲において、人為的な温室効果ガスの排出量から、人為的な吸収・除去量を差し引き、収支をゼロにする考え方です。
ネットゼロには、CO2だけを対象とするものと、メタンやフロン類などを含む温室効果ガス全体を対象とするものがあります。目標公表時は、対象ガス、算定範囲、基準年、目標年、削減と除去の内訳を明確にします。
排出削減と吸収・除去の違い
ネットゼロでは、省エネ、再エネ、燃料転換、低炭素素材、物流効率化などで排出を削減し、残余排出を吸収・除去で中和します。除去の例には、植林、森林管理、バイオ炭、大気直接回収・貯留(DACCS)などがあります。自然に存在する森林の吸収量を無条件に差し引けるわけではありません。
なお、工場や発電所の排ガスからCO2を回収・貯留する一般的なCCSは、大気への排出を防ぐ「排出削減」です。大気中にすでに存在するCO2を取り除く「除去」とは区別します。

ネットゼロが重要視される背景
パリ協定は、平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求するとともに、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出量と除去量を均衡させることを示しています。
パリ協定自体は2050年を達成年としていませんが、IPCCは1.5℃に抑えるモデル経路で、世界のCO2排出量が2050年代初頭にネットゼロへ到達すると示しています。
企業にとっても、ネットゼロは経営課題です。気候関連情報の開示、投融資の審査、カーボンプライシング、取引先からの排出量データ提出要請などを通じ、対応状況が企業評価や取引条件に影響する場合があります。
ネットゼロ・カーボンニュートラル・脱炭素の違い
関連用語の一般的な使われ方は、次のとおりです。
| 用語 | 主な意味 | 到達点 |
|---|---|---|
| ネットゼロ | 排出を大幅に削減し、残余排出と人為的な吸収・除去を均衡させる | 正味ゼロ |
| カーボンニュートラル | 排出量と吸収・除去量を均衡させる | 実質ゼロ |
| 脱炭素 | 温室効果ガス排出を実質ゼロへ移行させる取り組みや社会像 | 実質ゼロを目指す |
| 低炭素 | 現在より温室効果ガス排出量を減らす | ゼロとは限らない |
ただし、カーボンニュートラルとネットゼロに、世界共通の明確な区別があるわけではありません。
日本政府は、カーボンニュートラルを温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量を均衡させることと説明しています。国内では両者が同じ意味で使われることもありますが、SBTiなどの個別基準には、大幅な削減や残余排出の中和について具体的な要件があります。
企業が確認するScope1・2・3
企業の温室効果ガス排出量は、GHGプロトコルに基づき、一般にScope1・2・3で整理されます。
| 区分 | 排出の範囲 | 主な例 |
|---|---|---|
| Scope1 | 企業が所有・支配する排出源からの直接排出 | 燃料の燃焼、製造工程、冷媒の漏えい |
| Scope2 | 購入・取得したエネルギーの生成に伴う間接排出 | 電力、蒸気、熱、冷却 |
| Scope3 | Scope1・2以外のバリューチェーンに伴う間接排出 | 原材料、物流、廃棄物、出張、製品の使用・廃棄 |
Scope3が大きい企業では、自社拠点の省エネに加え、素材、製品設計、物流、取引先との協働を見直します。
参考: GHGプロトコル「Scope 3 Standard」

廃棄物・資源循環とネットゼロの関係
廃棄物は、資源循環だけでなくScope3排出量にも関係します。
事業活動から発生する廃棄物の処理は、Scope3カテゴリ5「事業から出る廃棄物」に含まれます。販売した製品や容器包装の使用後の処理は、カテゴリ12「販売した製品の廃棄」に該当する場合があります。
企業が検討できる主な対策は、次のとおりです。
- 廃棄物の発生抑制
- 製品、部品、容器などの再使用
- 分別精度の向上と再資源化
- 再生材や省資源設計の採用
- 処理方法や運搬ルートの見直し
- 廃棄物の種類、重量、処理方法の継続的な記録
廃棄物台帳、計量票、処理実績、マニフェストなどを整理すると、Scope3算定に必要な活動量を把握しやすくなります。ただし、リサイクルによる効果は、輸送や処理工程も含めて算定します。
SBTiによるネットゼロ基準
SBTiは、企業の削減目標が気候科学と整合しているかを確認する代表的な枠組みです。V1.3.1では、2050年までにバリューチェーン排出量を通常90%超削減し、残る限定的な排出を恒久的な炭素除去・貯留で中和します。
SBTiはV2.0を2026年6月に公表しました。V2.0による目標の妥当性確認は2027年2月1日に始まり、2028年2月1日以降はV2.0が必須となる予定です。申請や目標更新時には最新基準を確認してください。
ネットゼロ達成に向けた進め方
企業がネットゼロを目指す場合は、次の順序で進めます。
- Scope1・2・3の排出量を算定する
- 排出量の大きい活動を特定する
- 基準年、中間目標、最終目標を設定する
- 省エネ、再エネ、工程・調達・物流の改善を実行する
- 残余排出と吸収・除去の扱いを決める
- 実績を定期的に確認して計画を更新する
設備更新、再エネやPPA、燃料転換、低炭素素材、輸送効率化、製品の長寿命化、廃棄物の発生抑制などを、設備投資や事業計画と連動させます。

ネットゼロに関するよくある質問
ネットゼロとカーボンニュートラルは同じですか?
世界共通の明確な区別はありません。日本では同じ意味でも使われますが、個別基準では要件が異なります。
ネットゼロにはScope3も含まれますか?
バリューチェーン全体を対象にする場合はScope3も含めます。範囲は採用する基準に沿って設定します。
クレジットの購入だけでネットゼロを達成できますか?
まず自社とバリューチェーンの排出を大幅に削減するため、クレジットの購入だけでは達成できません。
CCSはCO2除去に含まれますか?
一般的なCCSは排出を防ぐ削減策です。大気から直接回収するDACCSなどは除去に該当します。
中小企業は何から始めればよいですか?
電力、燃料、原材料、物流、廃棄物の量を把握し、排出量の大きい項目から対策します。
廃棄物削減はネットゼロに関係しますか?
事業から出る廃棄物の処理はScope3カテゴリ5などに関係し、発生抑制や再使用も削減策になります。
ネットゼロのポイントまとめ
ネットゼロとは、温室効果ガスの排出量を可能な限り削減し、残った排出量と人為的な吸収・除去量を均衡させる状態です。
企業は、対象ガス、Scope1・2・3、基準年、中間・最終目標、残余排出の扱いを明確にします。排出量の大きい領域を特定し、設備投資や事業計画と連動した削減ロードマップを策定することが重要です。

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[著者]

経歴:2019年にエコブレインに入社。以降5年間、広報部での経験を活かし、環境保護の重要性を広めるための活動に尽力している。特にデジタルマーケティングとコンテンツ制作に強みを持ち、多くの記事を執筆している。
趣味: 読書、ヨガ、カフェ巡り
特技: クリエイティブライティング、データ分析とマーケティング戦略立案











