ELV指令とは?新ELV規則との違い・SOC4・企業対応を解説

ELV指令(End-of-Life Vehicles Directive/EU廃自動車指令)は、使用済自動車の発生を抑制し、適正な回収・処理、部品の再使用・リサイクルを進めるためのEU法令です。
鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの使用制限をはじめ、認可処理施設への引き渡し、リサイクル率、材料・解体情報の提供などを定めています。
さらに2026年には、ELV指令と自動車の再使用・リサイクル可能性に関する型式認証指令を統合する「規則(EU)2026/1738」が成立しました。新規則は2026年8月13日に発効し、原則として2028年9月1日から適用されます。
本記事では、ELV指令の対象や規制物質、新ELV規則との違い、日本企業に求められる対応を解説します。
※本記事は2026年8月28日時点の公表情報に基づいています。
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ELV指令とは
ELV指令は、正式には「指令2000/53/EC」と呼ばれる、EUの使用済自動車に関する法令です。
主な目的は次の3点です。
- 自動車から発生する廃棄物の抑制
- 使用済自動車や部品の再使用・リサイクルの促進
- 自動車に使用される有害物質の削減
現行指令の主な対象は、M1カテゴリーの乗用車とN1カテゴリーの小型商用車です。三輪車には、回収・処理に関する一部の規定が適用されます。
EU域外で製造された車両でも、EU市場へ投入される場合は規制への対応が必要です。日本の部品・材料メーカーにEU法令が直接適用されない場合でも、EU向け車両を製造する完成車メーカーから、取引条件として材料情報や適合証明を求められることがあります。
ELV指令と新ELV規則の違い
新ELV規則では、現行指令の有害物質管理や回収・リサイクルの仕組みを引き継ぎながら、対象車両、再生材、設計、情報管理に関する要求が強化されます。
| 比較項目 | 現行ELV指令 | 新ELV規則 |
|---|---|---|
| 法令 | 指令2000/53/EC | 規則(EU)2026/1738 |
| 法形式 | EU加盟国が国内法化 | EU加盟国へ直接適用 |
| 主な対象 | M1・N1車両 | 大型車・二輪車などへ段階的に拡大 |
| 有害物質 | SOC4を制限 | 現行の制限と適用除外を基本的に継承 |
| 再生材 | 一律の最低含有率なし | 再生プラスチックの最低含有率を設定 |
| 情報提供 | 材料表示・解体情報 | デジタル車両パスポートを導入 |
現行指令は2028年9月1日に原則として廃止されます。
ただし、有害物質制限など一部の規定には、2032年まで経過措置があります。
ELV指令の適用除外
技術的に代替が難しい一部の材料や用途には、SOC4の適用除外があります。代表例は、一定濃度まで鉛を含む機械加工用鋼、アルミニウム合金、銅合金、特定のはんだや電子部品です。
ただし、除外番号が存在するだけでは適用できません。含有濃度、対象部品、使用目的、型式認証日、スペアパーツの対象車両などが、附属書の条件に一致している必要があります。
適用除外は技術の進展に応じて見直されるため、除外に依存する部品を一覧化し、代替材料の検討状況と併せて管理することが重要です。
回収・リサイクルに関する要求
ELV指令は、有害物質の制限だけでなく、使用済自動車の回収・処理についても定めています。
EU加盟国には、使用済自動車を認可処理施設へ引き渡し、車両登録の抹消時に破壊証明書を使用する仕組みの整備が求められます。最終所有者は、原則として費用を負担せずに使用済自動車を引き渡せます。
処理施設では、バッテリー、燃料、オイル、冷却液などを取り外し、適切に分別・保管します。
使用済自動車には、次の目標も設定されています。
- 再使用・回収率:平均車両重量の95%以上
- 再使用・リサイクル率:平均車両重量の85%以上
車両メーカーには、新しい車種を市場へ投入してから原則6か月以内に、部品・材料や有害物質の位置などを含む解体情報を処理施設へ提供することも求められます。

新ELV規則による主な変更点
新ELV規則の主な適用スケジュールは次のとおりです。
| 時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 2026年8月13日 | 新ELV規則が発効 |
| 2028年9月1日 | 原則適用開始・現行指令を原則廃止 |
| 2031年9月1日 | 大型車、バス、トラック、二輪車などへ段階的に拡大 |
| 2032年9月1日 | デジタル車両パスポートを導入・再生プラスチック15%目標 |
| 2036年9月1日 | 再生プラスチック25%目標 |
新型車に含まれるプラスチックは、2032年9月1日以降に型式認証される車両で15%以上、2036年9月1日以降は25%以上を再生材とする必要があります。
使用済自動車由来の再生材に関する要件
再生プラスチックの目標のうち、少なくとも20%は、使用済自動車または車両の使用段階で取り外された部品から再生されたプラスチックで達成します。
2032年9月1日から導入されるデジタル・サーキュラリティ・ビークル・パスポートには、SOC4を含む部品、再生材含有率、部品の取り外し・交換、スペアパーツなどの情報が記録されます。

日本の部品・材料メーカーが準備すべきこと
自社部品がEU向け車両に組み込まれる場合、完成車メーカーや上位サプライヤーからELV対応を求められる可能性があります。
企業は、次の情報を整理しておく必要があります。
- 部品番号と構成材料
- 均質材料ごとのSOC4含有濃度
- 適用除外番号・用途・条件
- 材料規格やミルシート
- サプライヤーの適合宣言
- 必要に応じた分析試験結果
- 再生材の含有率と原料由来
- 仕様・工程・調達先の変更履歴
IMDSは、自動車の材料・化学物質情報をサプライチェーンで共有するために広く利用されています。ただし、ELV指令がIMDSの使用自体を直接義務付けているわけではありません。法令上の義務と顧客による取引要件を分けて確認してください。
また、車載部品にはREACH規則やEU電池規則などが関係する場合があります。車載電装部品だから自動的にRoHS指令が適用されるわけではありませんが、顧客がRoHS相当の管理を求めるケースがあります。
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ELV指令に関するよくある質問
SOC4は完全に含有禁止ですか?
完全なゼロ含有ではありません。均質材料当たり鉛・水銀・六価クロムは0.1重量%、カドミウムは0.01重量%まで一般的に許容されます。附属書に定められた用途には適用除外もあります。
日本の部品メーカーも対応が必要ですか?
自社部品がEU市場へ投入される車両に使用される場合、完成車メーカーや上位サプライヤーから材料情報、IMDSデータ、適合証明などを求められる可能性があります。
新ELV規則はいつから適用されますか?
2026年8月13日に発効し、原則として2028年9月1日から適用されます。ただし、再生材やデジタル車両パスポートなど、個別の要求には別の適用時期があります。
まとめ
ELV指令は、SOC4の使用制限、使用済自動車の回収・リサイクル、解体しやすい設計、材料情報の提供を定めたEU法令です。
新ELV規則では、対象車種の拡大、再生プラスチックの最低含有率、デジタル車両パスポートなどが導入されます。
EU向け自動車に関わる企業は、含有化学物質、適用除外、再生材、証憑を一体的に管理し、設計や調達先の変更時に再評価できる仕組みを整えることが重要です。

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[著者]

経歴:2019年にエコブレインに入社。以降5年間、広報部での経験を活かし、環境保護の重要性を広めるための活動に尽力している。特にデジタルマーケティングとコンテンツ制作に強みを持ち、多くの記事を執筆している。
趣味: 読書、ヨガ、カフェ巡り
特技: クリエイティブライティング、データ分析とマーケティング戦略立案











